洗剤・知識

フッ素とフッ化水素の違いは?危険性を徹底解説!

ハウスクリーニング業界でよく利用する薬液の中にフッ化水素とフッ素があります。

フッ化水素はシリカスケール(水垢)を溶かすことができますが、大変腐食性があり、人体に大きな影響を及ぼしますので、ハウスクリーニング業界は特に気を付けて扱う薬品です。

またフッ素は簡易的な保護効果があります。ハウスクリーニングでは仕上げ剤、保護剤として利用することが多いです。こちらはフッ化水素と比べると安全性が高く、手に付いてもさほど問題ありません。

フッ化水素とフッ素。似て非なるもの。今回はこのよく似た2つの成分について、特にフッ素にフォーカスしてみました。

 

 

フッ化水素って何?

私たちハウスクリーニング業界ではこのフッ化水素を使うケースが多くなりました。これも時代の流れが関係しているかと思います。美的感覚の向上と、ハウスクリーニング技術の向上から来ていると私は思います。フッ化水素を扱えば、シリカスケールを取り除くことが出来るので、美的に良くなります。A社が取れない汚れをB社がフッ化水素を使ってシリカを取り除けば、当然仕上がりが良くなりますので、お客様としてはB社の方がキレイにしてくれるとなります。次の依頼はB社に頼にたのみたい!となります。

シリカはケイ素を多く含んでいます。このケイ素はガラスのような固い結晶になり、カルシウムやマグネシウムよりも取れにくい厄介な水垢です。それを一瞬にして溶かすことができるのがフッ化水素です。

フッ化水素 SDS

フッ化水素の安全データシートです。(厚生労働省より)

 

 

健康に対する有害性は全て最も有害な区分1です。

 

この怖そうなマークは【GHSシンボルマーク】と言って、世界基準で物質の有害性を示したものです。

以下GHSシンボルマークの説明です。(厚生労働省抜粋)

 

 

どくろマークの区分1は死の危険性があることを示しています。

 

フッ化水素による死亡事故

1982年にこのフッ化水素によって痛ましい事故が発生しました。八王子の歯科医院で歯に塗るフッ素を間違えてフッ化水素を塗ってしまい、3歳の女の子が死亡してしまいました。

以下ウィキペディアから抜粋します。

4月20日午後3時40分頃、市内に住む女児(当時3歳)とその母親(当時33歳)が、虫歯予防のためのフッ化ナトリウムを塗布してもらうために、同院に訪れた。Xは、「八王子ではフッ素の塗布が義務付けられている」といい、フッ化ナトリウムと勘違いしたフッ化水素酸を脱脂綿にしみこませ女児の歯に塗布した。その直後、女児は口から白煙のようなものと臙脂色の唾液を出し、「からい」と訴えて仰け反った(フッ化ナトリウムは本来無味無臭である)。フッ化ナトリウムだとすれば異常な暴れ方であるにも関わらず、Xはフッ化ナトリウムと誤解したフッ化水素酸の塗布作業を続行した。Xの指示で、女児の母親と同院の助手の女性が女児の体を押さえつけ、再び液体を塗布したが、女児は悲鳴を上げて暴れだし、診察台から転がり落ちた。腹痛を訴え床を転げ回る女児を母親が抱き上げると、口の周りが真っ赤にただれていた。Xは、初めての反応に対して特殊体質によるものだと判断し、強心剤を注射した上で119番通報した。女児は救急車で近所の病院に搬送されたものの、症状が重篤であるため東京医科大学八王子医療センターに転送されたが、同日午後6時過ぎに死亡した。

Xが救急車に同乗し医療センターに向かっている間、Yは女児の異常な暴れ方に違和感を持ち、女児の歯に塗布した薬品を自分の歯につけたところ、強い刺激を感じ歯茎が荒れたため、うがいをして吐き出し、ようやく薬を間違えたことに気付いた。Yは、証拠隠滅のためにXに無断で容器などを洗い自宅の焼却炉で焼却処分した。しかし、同日に家宅捜索した八王子警察署によって診療室内の薬品や焼却炉内の灰が押収されている。

 

清掃業界でもフッ化水素による事故が起きています。

 

マンションなどの外壁を洗浄する際、フッ化アンモニウムを使用し黒ずみを取ることがあるのですが(現在は少ない)、薬剤の付いたスポンジを腰袋に入れて管理していたそうです。
腰袋から染み出したフッ化水素がお尻に付き、気が付いたときには骨が溶けていたという事故です。その作業員は病院で足を切断することになってしまいました。

 

フッ化水素は弱酸性

フッ化水素は強力な腐食性がある酸ですが、酸性濃度は食酢よりも水に近いpHです。

本来pH4~5くらいの弱酸性であれば肌に良い値なのですが、そう思って同じように素手で使うと、骨までフッ化水素が浸透し壊死する可能性があります。必ずゴム手袋を使用し、身体に付いた場合速やかに洗い流す必要があります。

 

フッ素について

フッ素はハウスクリーニング業界では汚れの再付着防止、保護効果として使用する場面があります。車の簡易コーティング剤にもフッ素をよく見かけます。先ほどの歯医者さんでの事故において歯に塗るのはこちらのフッ素のことで正式名は「フッ化ナトリウム」です。フッ素はフッ化水素のように危険性はありませんが、長期的にはどうでしょう。まずはフッ化ナトリウムのSDSを見てみましょう。

フッ化ナトリウムSDS

フッ化ナトリウムのSDS安全データシートです。(厚生労働省より)

急性毒性は区分3ですが、その他の臓器系は区分1、皮膚腐食性区分2、眼刺激性区分1です。このSDSからフッ化ナトリウム(フッ素)は危険性があるということがわかります。

フッ素の安全性についての賛否

歯に塗られるフッ素に関して色々調べてみると、歯科医院の中でもフッ素は安全だ、またはフッ素は危険だと意見が分かれております。体に詳しいスペシャリストでも意見が2つに分かれるのですから、消費者は一体どちらを信じれば良いのか分からなくなってしまいます。

フッ素肯定派と否定派

フッ素は虫歯になることを防ぐ効果があります。その為多くの歯磨き粉にはフッ素が含まれております。少量であれば人体に影響はないとされているため、虫歯にならないようにフッ素を進めております。

高濃度のフッ素、またはフッ素を大量的に飲んだ場合は人体に影響を及ぼします。これも事実です。そのためフッ素は毒であるという歯科もあります。

日本の歯磨き粉の約9割にフッ素が配合されています。
濃度の限界は1500ppm。量が多いとフッ素による虫歯予防になります。
500ppm上がるごとに6%虫歯を予防できます。
フッ素含有量が多い歯磨き粉を使うと虫歯になるリスクがより減ることになります。

フッ素中毒量

フッ素の限界量は、毎日0.1mg/体重という量です。
小学1年生の平均体重は約20kgです。よって1日のフッ素の限界量は2mgということになります。厚生労働省では6歳から1000ppmは使用して良いということです。
濃度1000ppmの歯磨き粉1g中のフッ素は1mgですから、1日2gの歯磨き粉を使うとフッ素中毒になる可能性があります。歯磨き粉を多く使いすぎないことが大事です。

ちなみに1mgがどれくらいかというと...💦

これだけです。

 

フッ素禁止国

現在ドイツ、スウェーデン、オランダはフッ素を禁止。WHOは6歳未満の使用を禁止。
アメリカもフッ素禁止になる可能性があります。ただ外国は歯磨き粉以外にもフッ素が多く使われています。ミネラルウォーター、マウスウォッシュ、塩、水道水にも含まれています。

日本でも水道水にフッ素を入れることが検討されています。これは虫歯予防です。
検討されているフッ素濃度は1ppmということですが、どれくらいの量のフッ素になるかというと年間で70トンものフッ素を投入することになります。塩素と同じく経皮吸収や経口吸収も可能性もあります。

直接歯に塗るフッ素コーティングのフッ素濃度はどれくらいか調べたところ、高濃度タイプは9000ppmでした。歯のみに塗ってフッ素を吸収しなければ問題ないと思いますがこれは5歳以上から保険適用外で処方できるようです。

フッ素(大量はダメ、微量は良い?)

何でも取りすぎると体に良くないというのは事実です。
大人の場合、塩なら200g、砂糖なら1kg、ビタミンCなら700gほどを一度に摂取すると死に至ります。

以下塩の安全データシートです。

塩や砂糖の取りすぎはダメですが、少量であればむしろ体のエネルギーとなります。ビタミンCも同様です。お酒もそうです。多量に飲むとダメですが、少量は健康を促進します。しかし、フッ素は歯以外の身体系にメリットはほとんどありません。

100%は難しいけどできるだけのことを

成分表を見ると危険性があるフッ素という成分。
少量であれば問題ないということですが、その少量が体に入ることは事実。
それを体の中に入れるのか、入れないのかという自己判断。

私は洗剤の中でも特にオーガニックを中心に研究していますが、従来の防腐剤は簡単に防腐ができて便利で安価です。食品添加物として認められている防腐剤などもありますが、防腐剤の中には人体や環境に影響のあるものもあります。それらの防腐剤はごく少量で完全に防腐されます。それだけ生命に対して殺菌効果があるということです。

フッ素の水性生物毒性は9ppmが慢性毒性でした。
フッ素(フッ化ナトリウム)はフッ素化合物であり、自然界で非常に分解しにくく環境残留性があります。

 

まとめ

最後まで見て頂きありがとうございます。
私がこういう化学物質に興味を持ったのは仕事がハウスクリーニングたったからです。

扱う洗剤に興味を持ち、成分が物に対してどう反応し、どのような影響を及ぼすのかを体験していく中で、洗剤以外の商品成分なども気になり、成分を調べたりしてきました。
汚れを落とすのには洗剤が大事ですが、その他にはアジテーション(ブラッシング)も大きく関わっています。歯に関しては毎日アジテーションしているので歯磨き粉は本当に少量で良いと感じます。

あと唾液は分解酵素アミラーゼが多く含まれています。天然の自分の体から出す洗浄剤ですね。生産量は1日1Lです。皆さんは1日1Lの唾液を飲んでいるんですね。唾液が歯や口内粘膜を覆うことで、細菌による刺激や感染、歯の摩耗・脱灰(歯のエナメル質の溶解)を防いでくれます。

逆に口が乾燥してしまうと細菌が繁殖しやすくなり、感染症になったり虫歯も増えます。口内環境を整える、ブラッシングを細かに丁寧にするなど、やれることはまだ沢山あると思います。ハウスクリーニングのフッ素コーティングは簡易的なものです。目安としては1ヶ月くらいの効果しかありません。歯磨き粉もそうです。効果を持続させるには塗り続けるしかありません。